あなたの死後のスマホ
最近は、終活とうたって、大手金融機関までもが、遺言信託、任意後見など、生前相続対策商品を売り物にしています。費用もそれなりに高いですし、弁護士、司法書士、税理士のノンストップ体制ということで、安心感があるような気がします。
ところで、今あなたの手にもっているそのスマホ・・・
もしあなたが死んだらどうなるのでしょうか?そのままの状態で大丈夫ですか?
スマホの終活問題
スマホ関係は、主に4つの面から考える必要があります。
①通信契約等 ②内部データ ③スマートフォン機器 ④アクセス外部データ
①通信契約は、二つ折り携帯の時代と同じように考えます。通信会社で死亡による解約手続を行えば足ります。解約をいつ行うのがベストか、の問題は残りますが、ここで議論すべき観点と異なりますので割愛します。
問題は、
②内部データです。
スマホには、連絡先、通話履歴のみならず、メール履歴、LINEトーク履歴、写真、音楽、閲覧履歴・・・さまざまなデータが保存されています。
例えば、スマホに保存されているLINEトーク履歴はあまり家族に見せたくないもの、そういう認識が一般的ではないでしょうか?
では、そのLINEトーク履歴は、あなたが死んだらどうなるのでしょうか?
まずは、法的に考えてみます。
スマホに保存されているトーク履歴は「相続」の対象か?
もし相続の対象となるならば、遺産分割協議や遺言内容によって決められることになります。民法896条は「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」としています。スマホに保存されているLINEトーク履歴データ(バックアップ分も)それ自体は(スマホ容量を占めてるし、目に見えて読めるけど)固体でも液体でも気体でもないので、「有体物」に該当しません。民法上所有権の対象は、「有体物」です。ということは、保存されているLINEトーク履歴は所有権の対象ではないので、それ自体を誰が相続するか、という問題以前に、そもそも相続の対象ではない、ということになります。
とは、いっても、トーク履歴が保存されている、そのスマホ機器(スマートフォン機器)それ自体は、財産性ある有体物ですので、相続の対象となります。
それゆえ、スマホ機器をどうするのか、という問題で解決していくことになります。
仮に「一切の財産は妻が相続する」という遺言を夫が書いている場合、
夫に子がいても、スマホ機器は妻が相続します。夫のスマホ機器は、妻が自由に処分できるようになります。
妻がデジタル機器データの重要性を認識していないタイプの場合、不燃ゴミにまぎれたり、近所を巡回してる廃品回収車にそのまま渡してしまうかもしれません。
遺言書を作成する場合、不動産、預貯金、株、自動車、貸金庫などは個別記載するのですが、その他の財産はひとくくりに書いてしまうことがほとんどです。
現代に合わせた配慮が必要です。
そして、
多くの人がかけているだろう スマホロック
これが死後のスムーズな相続手続きを妨げる原因ともなりかねません。
明日死ぬとは思っていないのでパスワードは自分だけで管理していると思います。
いま一度考え直す必要があるかもしれません。
LINEトーク履歴問題
死後のLINEトーク履歴を心配している方は、すでに、LINEの「プライバシー管理」でパスコードロックをかけていると思いますので、このパスコードを知られない限りは、履歴を見られることはないかと思います。本人がパスコードを失念した場合も現段階ではLINEのアプリを削除して再インストールするほかはなく、これによってトーク履歴は自動的に削除されるようです。
また、ほとんどの方が、スマホにパスワードロック、指紋認証を登録していると思います。
スマートフォンの指紋認証は、その性質上、死者の指では反応しないそうなので、パスワードロック解除の問題を考えれば足りることになります。
とはいっても、生死をさまよっている間に、指紋認証されてパスワード変更されるおそれは否定できません。
2020.01.20