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自筆証書遺言書保管制度が始まる

令和2年7月10日から、手書きの遺言書は、法務局で保管してもらうことが「できます」。
「できる」というだけで、法務局で保管せずに、自宅で保管してもかまいません。

 

法務局で保管する最大のメリットは、なんといっても、死亡後、裁判所での遺言の検認手続きが不要、という点です。
手書きの遺言の検認手続きは、ヘタすると数か月待たされることがありますので、この手続きをしなくていい、というだけで、相続手続きではスピード感があります。

 

そして、紛失の心配もないし、日付、押印漏れなどのチェックもしてくれる点で安心です。
でも、遺言内容が本人の希望どおりの実現可能な内容なのかなど、内容の相談はできません。。

 

個人的には、やはり、遺族の手続の簡易さを考えると、作成時に費用をかけた分、公正証書遺言にはかなわないなーと思います。
所詮・・数千円のお役所保管制度。

 

保管制度を利用している遺言者が亡くなった場合、相続人は、手続きに使用する遺言書情報証明書を発行してもらうために、
相続人全員の戸籍謄本、亡くなった方の出生~死亡時までの戸籍、相続人全員の住民票の写し(3か月以内)を集めて、法務局に提出しなければなりません。これをしなければ相続手続きが始められないからです。
そして、この手続きをとると、他の相続人に、遺言書保管してますよーってな通知が発送されることになってます。

 

個人的には、そんなんめんどくさー、と思います。
葬式やらなんやら疲労した私に、アンタそんなんやらせる気だったんかい、ツライわ~うらむわ~となるかも・・。
ここで、ツライから、戸籍収集とか、全部、プロに頼むわ・・・となると・・・
結局、費用面、変わらないじゃん(怒、ってなるかなーどうなんでしょう・・。

遺言の存在をアピールできるかも?

この保管制度の画期的な点は検認の省略だけではありません。

 

なーんと、自分が死亡した旨を指定した人に通知してくれる制度もあるのです。
具体的には、
自筆証書遺言書を法務局で保管する際に記入する「申請書」の最後の方に、「死亡時の通知」について☑する欄があって、1名のみ通知する人を記入することができます。
具体的には、遺言者が、自分の情報について保管側と戸籍担当がやりとりすることに同意して、死亡後に、保管側がその同意に基づいて死亡事実を確認したときは、あらかじめ指定された人に「遺言書を保管している旨の通知を発送、そんな流れです。

 

遺言者が通知を指定できるのは、1名だけです。
受遺者、遺言執行者、推定相続人 この中から、1名です。

 

あくまでも希望すれば・・・の話です。
相続人以外の受遺者を指定しておけば、その受遺者は、遺言者の死亡・自分への遺言の存在を知る機会になるかも

 

 

遺言者がこの通知を希望しない場合でも
死亡後に相続人が「遺言書情報証明書」の交付請求をすると、その通知が他の相続人、受遺者、遺言執行者に発送されます

 

ただ・・・
「全財産を妻に相続させる」という内容の遺言書であっても、他の相続人全員に通知がいくわけで、子なしの兄弟相続で、さらに代襲相続とかも発生してたら、姪っ子とかにもその通知が発送されるわけで・・
この点は、手書き遺言の自宅保管で検認手続きするのと変わらないわけです。
なんとなく、一族で、葬儀の際に、親族一同暗黙で納得していたとしても・・・改めて通知が行くのって、ある意味寝た子の心をかき乱すような気もします。

法務局に行く体力があるか

法務局で遺言を保管する制度を利用する場合、遺言者は、必ず、必ず、自分で法務局に行かなければなりません。両脇ささえてもらってでも、車いすでも、なんでも、とにかく本人が出頭しなければなりません。

 

この制度で、保管してある遺言書の内容を変更したいと思ったとき、自分がどうやっても法務局まで行くことができない、そんな状況が将来あるかもしれません。法務局に行かなければ、この制度上で遺言内容も変更できないのだから、こうなったときは、手書きの遺言を変更作成して自宅保管か、あるいは、費用割り増しで病院まで来てくれる公証人に公正証書遺言を作り直してもらうか、という方法をとらざるを得ないことになる。
なんだか、法務局に保管しておいた遺言の存在、との関係で、トラブルが待ち受けてる感じがしますねえ

コロナになって隔離されたら

最近は、コロナ感染が問題になっています。
病棟で隔離されて、遺言書を書こうにもペンが握れない、やっと書いたとしても、法務局に行くことができない、よって、今はこの保管制度は利用できない、ということになり、この場合は、回復後に自ら法務局に保管しに行くことになります。

 

でも、そんなときって、自分はもはや回復しないでここで死を迎えるかも・・と思うわけで・・・そのときに、「遺言書をちゃんと書いておけばよかった」と思うのかもしれません。

 

 

もちろん、民法は、こういう死を目の前にして自分で書けない状態の方の、遺言作成方法もきちんと定めています(もちろん意識・意思はしっかりしていることが前提だけど)。
ただねえ・・・外傷と違って、未知の感染症で隔離されている状態で、その方法がとれるのか・・・いや、もちろん、とれなければならないのだけれども、医療崩壊した現場での実現は困難かもしれません。

2020.06.28

 

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