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土地区画整理事業とは

「都市計画区域内の土地について、公共施設の整備改善及び土地の利用増進を図るため・・・土地の区画形質の変更及び公共施設の新設又は変更に関する事業」(区画法2Ⅰ)
ざっくりいうと、
無秩序に建物と細い道が入り組んでバスも通れず公園も無かった地区全体を、
土地の形を整えつつ、広い道路・公園も作って、美しくみんなが生活しやい地域にしましょう・・という感じで、
今ある地域コミュニティーも維持されるのが特色です。

 

当然お金も時間もかかります。

 

新しい道路・公園用の土地や事業費は、いびつな土地を整えてその一部から生み出します(減歩、保留地の売却)。整備後に割り当てられる土地(換地)は、従前の土地の位置、面積、環境、利用状況に応じて定められます(照応の原則)。
所有地面積は少なくなっても、環境や利用面の改善により地価は上がるので、前後の価値は変わらない、というのが原則ですが、過不足は清算金で調整します。

 

千葉市で現在(記事作成2015年)施行中である東幕張土地区画整理事業(幕張駅北口)は、
総事業費274億円
施行期間は平成8年から平成32年
施行面積は26.05ha、建物移転戸数456戸、合算減歩率28.07(実質22.19%)
となっています(千葉市HPより 平成27年現在)。

 

「都市計画決定から53年の歩み」(会長宮葉氏編集平成26年3月発行)によれば、
昭和36年(1961)に都市計画決定がなされ昭和43年以降起案された土地区画整理事業は実施にはいたらず、
その後勉強会を繰り返し平成元年には東幕張土地区画整理事業推進協議会が発足され・・・平成8年の事業認可にいたっています。
この資料は図書館で取り寄せてもらい借りれますので、対象区域居住者でなくても幕張住民ならば一度は見てほしいです。

 

ちなみに、幕張駅は明治27年12月開業という歴史ある駅だそうです。
平成32年(2020)東京オリンピックまでに快速停車駅となることが実現するといいですね。

 

 

  

 

施行者・土地区画整理審議会

<施行者>

 

土地区画整理事業を施行できる人は誰でしょうか?

 

法律上、個人施行者、土地区画整理組合、区画整理会社、都道府県及び市町村、国土交通大臣、独立行政法人都市再生機構又は地方住宅供給公社となっており、
個々の要件も定められています。 
なお、「個人施行者」は、「個人」といっても、宅地の所有者・借地権者でない人は含まれず、これらの権利者から同意を得た一定の法人を含みます。

 

東幕張土地区画整理事業(幕張駅北口)は、都市計画事業として「千葉市」が、施行規程(「千葉都市計画事業東幕張土地区画整理事業施行規程」という)を定め、事情計画を決定しました。
なお、都市計画の告示・事業計画決定の公告の日から換地処分公告の日までの間は、
事業障害防止と無益出費防止の観点から、その区域内の建築行為等は制限されます(所定の許可が必要(区画法76・3Ⅳ))。

 

 

<土地区画整理審議会>

 

 施行者が「都道府県又は市町村」である場合は、区域権利者の意見が事業に反映されるよう、
「土地区画整理審議会」が設置されます。

 

この審議会は、宅地所有権者・借地権者から選ばれる委員や学識経験を有する委員で構成され、
換地計画や仮換地指定について意見をしたり、換地不交付などの一定事項に同意権があります。
委員は10人から50人までの範囲、任期は5年以内など・・・法定されています。

 

なお、「東幕張土地区画整理審議会」の委員は、現在第4期で10名(任期は平成31年10月28日まで)で、
その「議事録」は、千葉市のHPで公開されています。

仮換地の指定

 事業開始から終了に伴う換地処分まではかなりの年月がかかるのが一般的です。
工事の円滑・権利関係の早期安定のために、工事の進捗状況に応じて順次指定した土地を使用してもらいましょう、というのが「仮換地の指定」です。
通常、換地予定地が指定されます。
従前の宅地について地上権などの宅地を使用できる権利者がいるときは、その対象が指定されます。

 

仮換地の指定は、法的には、従前地の使用収益停止および仮換地の位置範囲を定め使用収益権を付与するという施行者による形成的処分です。
仮換地指定の案は、供覧または協議された上で、その経過を極力尊重して指定にいたります。

 

仮換地の指定を受けた場合の物理的移転には2タイプあり、
土地権利者は建物を除去して更地にするとともに仮住居へ引っ越し、指定された仮換地の工事が完成したらその引き渡しを受けるタイプ(中断移転)と、
土地権利者が引き渡しを受けた仮換地に建物を建てて移転した後に従前地を更地にするタイプ(直接移転)があります。

 

補償金に関する補償契約も締結します。

 

仮換地の指定の効力発生日から換地処分公告の日までの間、従前の土地を使用することはできなくなり
仮換地について従前地と同じ内容の使用収益権をもちます。
イメージ的には、権利の印籠は従前地に残したままで、使用収益の実体のみを仮換地へ移すようなかたちです。

換地計画

従前の土地の代わりに他の土地を与えたり,金銭で清算する行政処分を行うために「換地計画」を定めます。

 

換地計画内容は次のとおりです(区画法87)
一  換地設計
 換地処分後の土地(換地)の位置、形状、寸法、地積、新しい町名、予定地番を記載した換地図を作成して定めます(規12)。
二  各筆換地明細
  従前地の町名、地番、地目、地積が、換地処分後のどうなるのかを各筆ごとに記載したもの(規13、別第六)
三  各筆各権利別清算金明細
  各権利ごと、各権利者ごとに、清算金の交付金額または徴収金額が書かれた明細書です。
四  保留地その他の特別の定めをする土地の明細
  保留地の町名、地番、地目、地積、換地処分後の土地に存続する地役権を、各筆ごとに記載したもの

 

地方公共団体などが施行する場合、換地計画の内容は2週間縦覧され、これに対し意見書の提出があれば土地区画整理審議会へ諮問しこれを採択するかを決めます。
その後、換地計画は都道府県知事の認可をもらいます。

 

 

<照応の原則>

 

「換地計画において換地を定める場合においては、
換地及び従前の宅地の位置、地積、土質、水利、利用状況、環境等が照応するように定めなければならない」(区画法89)となっています。
また、
 「施行者は、前項の規定により仮換地を指定し、又は仮換地について仮に権利の目的となるべき宅地若しくはその部分を指定する場合においては、換地計画において定められた事項又はこの法律に定める換地計画の決定の基準を考慮してしなければならない。」(法98Ⅱ)とされています。

 

判例に照らせば、
①従前地と換地が大体同一条件であり(縦の照応)
②同一施行地区内の各権利者相互間で換地がおおむね公平に定めらていること(横の照応)
これら双方の要件が満たされており、
①は、位置、地積、土質、水利、利用状況、環境など各別に検討し照応しない要素があっても総合的にみて大体同一条件であるかどうか判断します。

 

道路や公園も新設しつつ過小宅地区域全体を整えるとなれば、すべての要素について照応するよう換地するのは不可能に近く、各権利者間に多少の不平等が生じることも避けられないので、
これを是正する清算金の制度が設けられています。

 

照応の原則は、次の仮換地指定にも適用されます。
いずれにせよ、この換地が区画整理事業のヤマではないでしょうか。裁判例一つ見ても難しい問題が山盛りです。事業担当者のご苦労がうかがえます。

土地区画整理事業施行中の売買

<仮換地の売買>

 

土地区画整理事業施行中であっても土地の売買は可能です。
換地処分前の従前地の売買により、買主は換地処分により受ける換地を取得します。
また、仮換地を売買の目的物とした場合であっても、判例にれば、従前地の売買として解されます。

 

仮換地の指定がされた場合、従前地の使用収益権は停止され、同一の使用収益権は仮換地上において取得しますが、
従前地上の所有権は従前地に残ったままです。

 

買主が、現実に使用できるのは仮換地であり、従前地の形状は工事後残りません。
(契約締結に際しては、従前地の登記記録のみならず、仮換地の位置、範囲、地積を確認し、さらには、地区計画により建築可能な建物、事業計画により周辺地域がどのように誘導されていくのかについても、施行者に充分確認する必要があり。
また、清算金の徴収または交付は、事業施行者から換地処分公告の日の翌日における所有者に対してなされることがある点、清算金は売主・買主どちらに帰属するのかを明記し、組合事業の場合は組合員の地位の承継による賦課金支払義務等も発生しうる点に注意)。

 

売買による権利移転の登記は、従前地の登記簿に記録します。

 

 

仮換地においても、建築行為等の許可を得れば建物の建築が可能です。
そして、建物の表題登記は通常通り行わなければなりません。
なお、この場合、建物の所在地番は、その建物底地(建物がある現場)の区画整理事業前からの所在地番と換地予定地番(こちらはカッコ書き)の双方を記載します(例:○市○区○町○番地(仮換地○○土地区画整理事業区域内△街区△画地))。

換地処分の登記記録

 

その後、換地処分がされると、従前地の登記記録の表題部に、換地後の地番、地目、地積を記録し、従前の表示にはアンダーラインが引かれ、原因及びその日付欄には、通常は換地処分公告の翌日日付と「土地区画整理法による換地処分」と記録されます。

 

イメージ
一筆型換地(一個の土地に対して一個の土地)=表示変更型換地

土地区画整理事業

 

所在は、従前地表示に変更がなく同一の場合は何も記載されない
原因日付は、換地処分公告の翌日が記載。
権利部は、従前地の記録がそのまま換地の記録となるので、何もされない(地役権を除く)。

 

*この一筆型換地の場合は、前から持っている登記済権利証(登記識別情報)は、そのまま大切に保管しておいてください。

 

共同担保目録上の従前地の表示を換地の表示に変更
イメージ
土地区画整理事業

 

 

・・・参考まで・・・

 

合併型換地(数個の土地に対して一個の土地)の場合

 

従前地のうちの1筆の登記記録を用い、「原因及びその日付[登記の日付]」欄は、「平成**年7月25日土地区画整理法による換地処分 他の従前の土地1234番5、1234番8 [平成**年7月26日]」。ののように記載する。甲区においては、所有権登記があれば「土地区画整理法による換地処分により所有権の登記をする旨並びに受付年月日及び受付番号」を記録。所有権の登記記録がない場合は、表題部所有者が所有権の保存登記を行う。
他の従前地の登記記録は閉鎖する。
登記識別情報が、所有権名義人に通知される。

 

分筆型換地(一個の土地に対して数個の土地)の場合
換地のうち一筆は、従前地の登記記録を用い、「原因及びその日付[登記の日付]」欄は、「平成**年7月25日土地区画整理法による換地処分 他の換地 ○○市○○○一丁目3番21 [平成**年7月26日]」のように記載する。他の換地については、新たな登記記録を作成し、他の換地の地番を記載する。 

 

 

  

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